もくじ
1、『日々』
2、『信心』
3、『亡国』
4、『肯定』
――当たり前の幸福という虚妄は、人間における精神病の一種である。
その価値基準は定まらず、何処にあるか解らず、何によって齎されるかも不明であり、現実感はなく、しかし漠然として意識に刷り込まれた、拭いきれない厄介な病だ――
あらすじ↓
旗本竜子は引きこもりであった。外の世界を断ってもう二年半になる。
進歩はなく未来はなく、幸福も夢も無い彼女だったが、ただ唯一、自身を認めてくれる存在がいた。
隣に住む十歳の少女、水木加奈女である。
とても子供とは思えない知性を持つ彼女は、竜子を臣下か下女か、民か信者のように扱うのだ。
一切の社会に属さず、心に傷を持った竜子にとって、加奈女との交流こそが営みであり、彼女と対話する機会が設けられるベランダこそが世界であった。
二十歳の引きこもりと十歳の少女。そして一人の来訪者による、理性と愛情、そして信心の物語。
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